健診・人間ドックで指摘されることの多い眼科の異常
健診・人間ドックなどで指摘されることの多い眼科の異常
人間ドックで眼底写真を撮影した場合のお話です。微妙な所見だと曖昧な用語で記載せざるをえない場合もありますが、よくある異常は以下のような用語で指摘されます。注意しなくてはいけないのは、人間ドックでは眼底写真はオプション検査となっている場合がある点です。そもそも眼底写真を撮影していなければ、以下のような異常があっても指摘されることはありません。
〇視神経乳頭陥凹拡大、網膜神経線維束欠損、高眼圧
緑内障の疑いがある場合に指摘されます。
〇網膜出血、網膜白斑(とくに網膜静脈閉塞症について)
網膜に赤い出血や白い斑点がみられます。多くの場合、赤は出血、白は虚血を意味します。網膜静脈閉塞症、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性、が主な原因疾患です。
・網膜静脈閉塞症
網膜は人体で唯一血管を直接みることができる部位です。その網膜にある静脈がつまった状態です。動脈硬化で硬くなった網膜"動脈"が、網膜"静脈"を圧迫し閉塞します。つまり動脈硬化が原因です。静脈が閉塞するとそこで血液が停滞して行き場のなくなった血液が漏れ出ることで出血します。出血は見た目が派手ですが、いずれ必ずなくなります。しかし問題は出血そのものではありません。網膜の出血部分は同時に網膜虚血となります。虚血があると眼底写真では赤い出血だけでなく白い斑点も出現してきます。虚血は人体にとって大きなストレスです。網膜虚血は網膜に浮腫(むくみ)をもたらします。網膜のなかでもとくに重要な黄斑に浮腫をきたすと、視機能低下につながるため、抗VEGF薬の硝子体注射の適応となります。虚血が改善しない場合は網膜光凝固(レーザー)が必要になる場合もあります。また動脈硬化がそもそもの原因ですから、眼科的治療だけでなく動脈硬化の原因となる糖尿病や高血圧の治療も必要になります。
〇黄斑変性
網膜のうち、中心にあって、とくに視機能上重要な部位が黄斑です。言葉で表現するのが難しいのですが、その黄斑が、萎縮(薄くなる)したり、色調に変化・ムラがでたり、出血する状態です。とくに新生血管が出現してくると、新生血管から血液成分の漏れが生じる場合があり、抗VEGF薬の硝子体注射の適応となります。
〇黄斑上膜、黄斑前膜、網膜上膜、網膜前膜
いろいろな呼び方がありますが、上記4つともどれも同じ状態を意味しています。網膜の中心部にあって、とくに視機能上重要な黄斑部分に余分な膜がかかってくる状態です。網膜は視神経細胞の集合体ですので、その細胞配列が乱れることで、視力低下や変視(本来まっすぐなものが歪んで見える状態)をきたします。厚みをOCTで確認します。OCTとは網膜を体のCTのように網膜の断面を撮影するものです。放射線は使用しないので、体のCTのようなX線被曝はありません。膜が薄く、自覚症状の少ない場合は、膜が厚くなってこないか、外来通院で経過観察します。膜が厚く症状が強い場合は、膜をはがす手術が必要になります。